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旧アクリル塗膜の上に塗るときの落とし穴
塗り替え工事では、下地との密着や既存塗膜の状態を確認してから施工します。
それでも、施工前には大きな異常が見られなかった外壁で、塗り替え後に塗膜の膨れが発生することがあります。
今回経験したのは、古いアクリルエナメル塗膜が残っていたサイディング外壁で、改修塗装後に膨れが発生した事例です。
メーカーにも現場を調査してもらった結果、単純な密着不良とは違う原因が見えてきました。
同じような既存塗膜を塗り替える職人さんにとって、施工前の判断材料になる事例だと思うので記録しておきます。
何が起きたのか
改修塗装を行った外壁の一部、特に日射を受ける面に、大小の膨れが発生しました。
膨れの大きさは小さいものから20mm程度まであり、表面だけを見ると、新しく塗った塗膜が下地から浮いているようにも見えます。
しかし、膨れ部分の塗膜を採取して確認すると、剥がれていた位置はサイディングと旧塗膜の境界ではありませんでした。
古い塗膜そのものの内部で破断していました。
さらに旧塗膜には溶剤に反応する性質が確認され、調査から、既存塗膜は古いアクリルエナメル系塗膜と考えられました。
原因は「新しく塗った塗料」だけではなかった
今回重要だったのは、旧アクリル塗膜の性質です。
古いアクリルエナメルに使われている樹脂には、温度が上がると軟らかくなりやすい「熱可塑性」という性質があります。
旧塗膜の内部には、施工時などに生じた非常に小さな空隙や気泡が残っていることがあります。
外壁が日射を受けて温度が上がると、
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旧塗膜が熱で軟らかくなる
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内部の微細な気泡が膨張する
という現象が起こります。
旧塗膜だけの状態であれば、小さな変形が発生しても外気側へ逃げたり、目立たない状態で収まっていた可能性があります。
ところが、その上から新しく塗装すると状況が変わります。
上塗りによって気泡が逃げにくくなる
新しい塗膜が旧塗膜の表面を覆うと、旧塗膜は新しい塗膜によって包まれた状態になります。
メーカーの説明では、これを「ラッピングされた状態」として捉えていました。
内部に残っていた気泡が日射によって膨張しても逃げにくくなり、その力が新しい塗膜まで押し上げます。
その結果、それまで目立っていなかった旧塗膜内部の問題が、塗り替え後に大きな膨れとして表面化することがあります。

改修塗装後に確認された塗膜の膨れ。写真では分かりにくい程度でも、日射を受ける面を中心に発生していました。

旧アクリル塗膜の内部にある微細な気泡が、日射による温度上昇で膨張。上塗りによって逃げ場がなくなると、膨れとして表面に現れることがあります。※概念図
厄介なのは、施工前には普通に見えること
この事例で難しいと感じたのはここです。
既存塗膜が大きく剥がれていたり、明らかに密着不良を起こしていれば、施工前に異常を判断できます。
ところが今回のようなケースでは、塗る前の表面だけを見ても問題が分かりにくい。
旧塗膜自体は残っていて、表面上は塗り替え可能に見えます。
しかし内部には、
「熱で軟化する古い塗膜」
「微細な気泡」
という、見た目だけでは判断しにくい条件が残っています。
その上へ新しい塗膜を重ねることで、それまで表面化していなかった問題が出てくる。
ここが通常の密着不良とは少し違うところでした。
同じ失敗をしないために
今回の経験から、古い建物を塗り替えるときは、単に
「今の塗膜が剥がれていないから大丈夫」
とは考えない方がいいと思っています。
特に古いアクリル系塗膜が疑われる場合は、
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既存塗膜が何なのか
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溶剤に対してどのような反応をするか
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強い日射を受ける面か
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既存塗膜そのものが安定しているか
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上塗り後に温度変化を受けたとき、どう挙動する塗膜なのか
まで考える必要があります。
密着試験だけでは見えない問題もあります。
分からない旧塗膜に出会った場合は、塗料メーカーへ確認することも施工前判断の一つだと思います。
今回、一番勉強になったこと
塗膜の不具合を見ると、どうしても「上に塗った材料」や「施工方法」から原因を探しがちです。
しかし塗装は、新しい塗料だけで成立しているわけではありません。
新しい塗膜のさらに下に、過去に何が塗られているのか。
今回の事例では、そこが非常に重要でした。
古い塗膜は見えなくなるだけで、なくなるわけではありません。
改修塗装では、新しい塗料を選ぶことと同じくらい、既存塗膜をどう判断するかが重要だと改めて感じた事例でした。
同じような旧塗膜に当たった職人さんの、施工前の確認材料になればと思います。
※この記事は、実際の施工後に行った現場調査とメーカーによる技術的な確認内容をもとに、当社の経験として整理したものです。塗膜の膨れは下地・水分・施工条件・既存塗膜などさまざまな原因で発生するため、すべての膨れが同じ原因によるものではありません。
